Thursday, February 16, 2006

日本古来の生き方死に方

棒殴死
棒で叩き殺された死体は、目開き、手開き、腹は張れず、全身に小さな傷があっても別に大きな傷があるはずである。

その傷痕が急所にかかっていれば、其処で死んだと定める。

物でもって叩き殺した痕は、青、赤、紫又は黒く膨れている。
痕の形は斜め、横、縦にあるはずである。

棒などで滅多打ちに打った傷は、多くは急所でない所にあたる。
そして打たれた人が一~二時間過ぎてから死ぬ場合もある。

一、二日、三、五日から一〇日過ぎてから死ぬ場合もある。

堅いもので打たれて即死する場合もある。
物か手足で打った傷痕は、重症の場合は紫黒色をして腫れあがっており、次に重いのは紫赤色して少し腫れあがっている。

次は紫赤色で腫れのないものだ。
およそ物で叩き破れた傷が頭にあれば、皮が破れていなくても骨肉が損している

生存中に鈍器で叩くと、皮下の血管が破れて出血を起こす。

此れを皮下出血という。
皮下出血は、生存中に受けた傷である証拠で、死ねば血の循環が止るので出血しない

刃傷死
死んだ後に、刃物で切った傷は傷口が乾いて、その色が白く出血もない。

捻ってみればただの水が出るなり。刀にて切った傷口は、浅いものは狭く、深いものは広い。
生きているときに首を刎ねたのは首筋が縮まり込んで短くなり、死んでから首を刎ねたのは、首筋が縮まらず、長いままのろりと伸ばしている

自割死
自分で喉の下を刺して死んだ場合、唯一度で直ぐに死んだ場合、その傷痕深さ五センチで食道、気道ともに断ったものだ。
もし一日過ぎてから死亡した場合は、その傷の深さは四センチで、食道だけを断ったものである。

喉の下を割ったときに、その傷が気道まで入れば即死である自ら喉の下を刺して死んだ場合、口、目、共に閉じ、両手握り肘は曲がって縮まっている。その死体は刃物をきっと握って力んでいる様子がある

毒殺死
毒薬にあたって死んだ場合は、口、目、共に開き、顔は黒紫または青い。
口、目、耳、鼻の中に出血している。唇は破れ舌はただれ、口の肉は黒紫色で手の指の爪は青くなっている。

火傷死

一番嫌な死に方だ。

火に焼けて死亡した場合は、皮が焦げ肉は爛れ、手足は縮み、口鼻耳の中には皆、灰が入っている。

此れはその人が、まだ死なない前に、火から逃げ回り口を開き悶え死したために、息につれて口の中に灰が入ったためだ。

また死んだ後に火の中に入れた場合には、口鼻耳の中には灰は入らない

老病の人などが寝ているうちに失火して焼け死んだ場合には、肉の色が焦げて黄ばんでいる。

或いは、両手を屈めて胸の上にあり、両膝も曲がって、目は開き歯、又は唇も噛みしめ、脂汗が出て黄色になるのだという。

眉毛なども焼けて巻き縮まっており、爪の指は焦げて黄色になっている。

睫毛の焼け具合で、生きながら焼かれたか、死んでから焼かれたか、判断できる。

現代の基準では、火傷は一~四度までの段階に分類されている。

一度赤くなり二度水疱が出来、 三度瘡蓋を生じ、四度炭化する。

普通、焼死の死因は、燃焼したガスで窒息するためで、生前に火の中に入って死んだ者は、一度から四度までの火傷の痕跡があり、気道内に煤を吸い込み血液中に炭酸ガスが送り込まれ、其れがヘモグロビンと結びつくので、焼死体の血液の色は赤味を帯びている。

従って死斑の色は鮮赤色で、内臓の色も鮮赤色である。

また火焼死体の手足を引っ張る時には、切創によく似た裂傷をつくりやすいので注意しなければならない。

此処で、昭和六三年に起きた灯油で燒身自殺をした者の救急搬送事例をみると、次のような処置を行なわれていた。

現場到着時の状況は、火は消化されていたが身体全身に熱傷が酷く、仰臥位で倒れており、意識レベル三-三〇〇、脈拍-微弱、呼吸困難(気道熱傷の疑い)、顔面は特に酷く両眼は失明の恐れがあり、熱傷範囲は全身の七〇~八〇%と判断した。

応急処置として気道確保、酸素投与、カバー付毛布で保温ショック防止処置を施した。

医療機関への収容は、外科当直の病院を選定搬送した。

湯発死(湯傷死)
熱湯を浴びて死んだ死体は、皮肉は皆さけ、皮は剥けて白くなっている

肉についている皮も又白く、肉の見えているところは多く爛れている

もし煮え湯の中にあれば、多くは転げ伏して手足、顔、胸の上に傷が残っている。

其の痕は打ち叩かれた痕に似ている

或いは頭はつき足はふんばり手は推し開いている。

また多くは両足と股と尻とに、打ち損じた所がある。

其れが小さな出もののように吹き出て、ぶつぶつとしている。

八、病患死
凡そ病死の場合には、形痩せ弱って、肉色しぼみ黄ばみ、口も目も閉じ、両手は少し握っている。

また腹も落ち両目は黄ばんでいる。

病人が飢え凍えて路上で死んだ場合には、その遺体は痩せ弱って肉色は萎み、黄ばみ口目ともに閉じ、両手は少し握っている。

口は食いしばり、歯は焦げて黄色で、唇は歯につかない

卒中風で死亡した者は、その遺体は多くは肥っており、色は少し黄ばみ、目口とは閉じ、口の中によだれが出ている。

流行り病で死んだ者は、目は閉じて口は開き、全身黄ばみ、薄皮が腫れているように見える。

そして手足共に伸ばしている

卒中で死んだ者は、目を開いて、歯を食いしばり、又は口目歪み、口の両方、鼻の内に涎泡が流れ出て、手足は屈み、全身は黄ばみ痩せている。

暑気にあたって死んだ者は、目合って舌は出ず、面は黄白色である。

凍死
凍え死んだ者の死体は、首が縮まり、足屈み両手足を抱き、全身凍えて鳥肌になって、肉色は黄ばんでいる

凍死の死体は、顔の色は衰えて黄ばみ、口の中に涎泡があり、歯は堅く閉じ、身はまっすぐ、両手は厳しく胸を抱く

その死体を改めるには、酒粕を暖めて洗う。
少し暖まれば顎の下が紅色になって、口の中から涎泡が出る

十、圧死
垣根などが倒れかかるか、又は屋根などが落ちて、押し潰されて死んだ遺体は、舌は出て、瞳は膨らみ、耳鼻口の中はすべて出血している。

重いものが落ち急所に当たった場合、両眼が飛び出、舌も出て、両手は少し握る

強く圧し掛かれば、まだ息の絶えぬうちに血が死んで、流れないため全身が紫黒色になり、或いは鼻から血又は水が出ている

血が流れ、皮が剥けた所は、回りが赤く腫れ、骨も筋も損なっている

車碾死(轢死)
車の輪に圧されて死んだ者は、その死体は少し黄ばみ、口目ともに開き、両手は少し握っている

其の当たった場所の多くは胸の上、両の脇骨で、其の他も急所を外れては、死ぬことはない。

自動車や電車に轢かれるのを轢死という。

電車に轢かれたときは、体はバラバラになってしまうが、生きていた人が跳ねられる場合には、何処か生活反応が残り、死体を投げ込んだ場合には生活反応が見られないという。

自動車事故による死亡は、頭蓋骨骨折、肋骨、大腿骨、腕骨の骨折、内臓破裂、内臓転移が多く、内臓の破裂では肝臓、腎臓、脾臓である。

また胃、腸、膀胱は中身が詰まっているときは破裂するが、空の時は破裂しないという。

十二、雷震死
雷にうたれて死んだ者は、その肉の色が黄色に焦げ、全身は柔らかに黒色になっている。

両手は開き、口は開き、目の皮は破れ、耳の後、髪の生え際は焦げて黄ばみ、焼け焦げた痕は、皮肉が強張り、縮まり、衣服も焼けて破れている

或いは火の気ない場合もあり。

そのうち損じた痕は、多くは脳の前か又は後の方にあり、多くは脳が割れて開いている

髪も炎に焼きついたようになって、全身に手の掌ほどの皮が浮いて、紫赤色になっている。

肉は損なわれず、又胸、背、腕に文字の様な痕がついていることもある。

雷や強い電流で死ぬ場合には、電流の出入口に色々の火傷の痕があり、また皮膚に電紋という樹枝状の赤斑が見られる。

電圧の力や個人差によって生死を分け、一〇〇ボルトで死ぬ人もいれば、二〇〇〇ボルトでも死なない人がいるという。

飽食死
凡そ、飲食で満腹になった時に、付き倒されるか、或いは踏まれれば、内臓が破裂して死ぬ場合がある。

その場合、別に外の異常がなく、ただ口鼻肛門に食べたものが出、便には血が混じって出ている

十四、窒息死
布などで口鼻を押しつけて殺した死体は、腹が膨れている。
此れは空腹時でも同じである。
また目は開き瞳は突き出、口鼻の中の血が流れ、顔は血が寄って赤黒色になっている。

現代の見解では、顔が暗紫赤色に膨れている。
結膜に小溢血点がある。
胸や顔の皮膚に溢血点がある。
死斑が顕著である。

十五、蛇毒死
まむしなどに噛まれて死亡した者は、その個所が小さく損なわれて、黒い痕となっており、その回りは青く腫れ、青黄色の水が流れ出て、毒気が手足に流れ全身腫れて光っている。
顔色は黒くなっている。

十六、男子作過死
男子性行為が多すぎると、精気が抜けて、婦人の身体の上で死ぬ者がある。

真に其れが原因の場合には、死んだ後にも陰茎が怒張しており、偽物は萎えている。
今日では、いわゆる腹上死は、心臓病か脳の動脈軟化症の者が腹上死するので、この記述はあてにならないというのが一般的だ。

仰臥停泊微赤黄色(死斑)
凡そ遺体の衿もと、背、両脇骨の後、腰腿のうち、両肘の上、両腿の後、膝の曲がった内側などに、少し赤色になって疑わしいことがあっても問題ない

遺体が死んでから仰向きのままに置いておくと、血が下に溜まって色合いが赤くなることがある。

背中の皮下の静脈にたまった血液の色が、皮膚を透して見えるのが死斑である。

暗赤褐色の色調で、見たことのない人は皮下出血と思うのも無理はない。

十八、首吊り死
自分で首を吊った者は、その死体の両目が閉じ、唇の色が黒く外に開いて、歯を現わしている。

もし咽の上の方を絞めたときは口が開き、こめかみが堅く歯で舌先を噛んで舌が出ない

咽の下の方を括ったときには、口が開いて舌が歯より先に出ている

顔色は紫赤口の両縁、胸のあたりに涎が垂れている。

両足の先が下に垂れて、腿の上の血が集まる痕が火で焼いたようになっている。

腹の下凹んで青黒色になっており、大小便も出ている。

首吊り死体は数日も経てば、全身が崩れ爛れて、そのは括られたまま上に残り体は地に落ちる

その時には、肉は潰れ骨が出て来るものである。

括った縄の絞め込みが深くなるため、両腕の骨、頭骨なども赤く歯や指先の骨なども赤色になっている。

首吊りは外見は見苦しいが、首を吊った瞬間に意識を失うから、一番苦痛の少ない死に方であるという。

因って、今現在の死刑執行も、刑法で死刑は絞首に因って此れを行う、と定められている。

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