Wednesday, February 15, 2006

食べたいの、吐きたいの?

過食嘔吐……そんな言葉もなかった大昔に、わたしの地獄は始まった。

最初は乗り物酔いだった。中3の冬休み、ダチと先輩の車で初詣で行ったとき、帰りに吐いちゃって。

姉御肌のわたしは、生まれて初めて級に心配されたり優しくされたりで、恥ずかしいのに心地良くて。

序でに、ビニール袋ン中の吐瀉物が、余りに多くて、未消化の麺やら肉やら野菜やらがしっかり見分けられて……これ全部贅肉になるの? と思ったが最後、大事な入試控えているのに、食べる行為が怖くなっちゃった。

でもまあ何とか、志望校に入ることはできて、それなりに友達も彼氏もできて、青臭い春を謳歌できていたのだけど、ほんの些細な一言が、何と16年に渡る摂食障害の幕を開けてくれた。

その一言、美容院で、「サイドシャギー入れると、顔小さく見えるよ」だった。

わたしの顔はデカいのか、わたしゃデブなのか、そういえば車酔いして吐いたとき、あんな沢山胃に入っていた、あれが顔をデカくする、吐けば優しくして貰える、ついでにスカート58cmにダウンできる、彼氏も腕回し易くなる、悩み解消、もっとラブラブ、良いコトばっかじゃん、と、思考回路がショートして焦げて、満腹中枢自爆、別に食べたくないのに、吐き気する程、胃に物入れないと吐けないから入れて、ゲロる。

休みの日は、段々遊びにも行かず、ただ食いゲロするようになった。皆心配してくれたり、叱ってくれたり、でもわたしにはもう、言葉や常識は通じなくて。

痩せることより、吐く行為自体が吐く目的になってしまった。

症状を詳しく述べる必要はないと思う。

様々な女性週刊誌や健康本で、健常な編集者が患者の狂気を綴っているから。それに地域で同病相憐れむ会もある。

わたしも顔を出したことがある。
編集者はなるべく気持ち悪い内容を穿り出すことに懸命、会員達は互いに「吐く自分を愛そうよ」って傷の舐め合い、カウンセラーは「歯を保護する為、吐く前に緑茶でうがいをすると良い」などと有り難いお言葉をくれた。

馬鹿らしい。

自分で自分の醜さを真正面から受け止め、憎みに憎んで愛想を尽かし、自分に殺意を抱き、自殺に失敗して大恥掻いて、周囲に目一杯迷惑掛けて、どん底のもっと下を掘り下げて、それでも死ねないし消えられないから、生きるしかないって自分で気付かないと、反吐の底なし沼から指先さえ出せない。

薬や精神科医に頼ることも必要だと思う。
自律神経がもう異常になっている筈だから。
どうにも辛いときは、睡眠薬ででも眠ってしまうほうが良い。心のケアも要るけれど、肉体もぼろぼろになっているから。

そんな中でもできるのは、日記を書くこと。

自分にだけは正直に、二十四時間で何をどれだけ食べて、どの程度吐き切れたか、体重、体温、便通、睡眠時間、そして、無駄に捨てた食物に幾らのお金が掛かったか、それを稼ぐ為、誰がどれほどの労苦を要したか、合計何回吐いたか、全部赤裸々に書き留め、毎日読み返し、このままを望むのか、正常な生活を望むのか、必死で自問自答し続けること。

皆が皆効果が有るとは思わないが、自問自答は絶対必要だといいたい。追い詰めるかもしれない、自死に走るかもしれない。
でも、いつまでも、両親が亡くなって誰も買い物や掃除をしてくれなくなっても、吐き続けることは金銭的に不可能です。
それだけは、目を背けられない事実、直視すべき現実です。
一人でも、わたしと同じ地獄から脱出する人がいることを祈っています。
或る新聞社から、危険で無謀と止められたけれど、敢えて言います。
一人じゃない、わたしはあなたの苦しみの1%くらいは実感でき、戦え、と叫び、と一緒に苦しむ覚悟が有ります。

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