Wednesday, February 15, 2006

鬱病の薬~参

30、非ベンゾジアゼピン系の睡眠鎮静剤、ベンゾジアゼピン系の薬剤

非ベンゾジアゼピン系の睡眠鎮静剤としては、ゾルピデム(マイスリー)とゾピクロン(アモバン、メトローム)がある。

此れらはベンゾジアゼピン系と同じGABA受容体に結合するようになっているが、少し別のサブセットになっており、このためある程度ベンゾジアゼピン系との交差性があるが、筋弛緩作用が弱く、抗不安作用が弱く、抗てんかん作用が弱く、極めて短時間作用型の睡眠導入剤として使用される。

此れらの薬剤はベンゾジアゼピン系にあるような耐性・依存性や反跳作用を生じにくく、また筋弛緩作用もなく極めて短時間作用型であるために、特に老人の不眠症に対して用いられることが多くなっている。

この薬剤も、ベンゾジアゼピン系と同様に、空腹時に服用することで吸収が早くなるため、基本的には眠前の空腹時に服用するのが普通だ。

31、ベンゾジアゼピン系の薬剤

殆どどれも似たり寄ったりの作用を持ち、どれも同じような適応に使用することができる。

分類上「睡眠導入剤」にされているものも、「抗不安薬」にされているものも、基本的に変わりはないようだ。

ただ、作用時間の長さと、力価 potencyの強さ、そして代謝のされかたの違いによって、どういったケースに、どういった薬剤を選択するかが決まってくることが殆どだろう。

副作用としては、鎮静、筋弛緩作用、認知機能の低下、脱抑制、依存性などがある。

このうち、鎮静、筋弛緩作用、認知機能の低下といって副作用は、特に老人の場合に大変に問題であり、転倒などの事故を引き起こしたり、せん妄を引き起こしたりすることがある。

一般に「精神科の薬、安定剤を飲むとボケが早まる」という誤解があるのは、このためではないかと思われる。

ベンゾジアゼピン系については、明らかな催奇性はない

しかし他の全ての薬剤と同様に、もし可能であれば妊娠、出産の時期には止めておいた方が良いだろう。

特に出産直前にベンゾジアゼピンを使用していると、新生児にやや鎮静効果が出てしまうことがあることが知られている。


32、ストレスに関連した不安、社会恐怖、アガリ症

一般の人が、何らかのストレスに不安という形で反応することは、非常に当たり前のことであり、適応的でさえある。

抗不安薬を使用した治療の対象とするのは、
(一)不安の程度が強すぎ、日常生活や働きに支障を与えている場合
(二)抗不安薬を使用することで、其の人のより適応的な行動変化への動機づけを妨げない場合
(三)抗不安薬を使用することによる依存性や筋弛緩作用(特に老人では重大な問題だ)、などの副作用よりも、作用による利益が明らかに高い場合、ということになる。

抗不安薬による治療を行う場合、基本的には低力価で長時間作用型のベンゾジアゼピンを使用すべきと考えられている。

其れは此れらの薬剤の方が依存性を生じにくく、止め易いからだ。

ジアゼパム(セルシン)にして一日三〇mg以下で十分であることが殆どだ。

老人であったり、肝機能低下(肝硬変)がある場合は、代謝の問題を考慮してロラゼパム(ワイパックス)を使用することがより安全だろう。

33、社会恐怖(対人恐怖)、アガリ症

社会恐怖(対人恐怖)には、一対一で人と会う時にも強い不安を感じるものと、大勢の前で何かをする(会議で発言をする、みんなの前でスピーチをする、など)時に強い不安と身体症状(動悸、発汗、赤面、震えなど)を生じるものとがある。

このうち、最も多い後者のものは、精神的な不安と同時に身体的な症状(震え、動悸など)が目立って出てくるために、其れによって、さらに動揺し、声もでないくらいに緊張してしまう、というパターンが多い。

この症状に対してアルプラゾラム(ソラナックス)などのベンゾジアゼピンも不安を軽減することに有効であり、発言をする状況に入る三〇分前くらいに服用すると効果的ではある。

しかし、ベンゾジアゼピンは鎮静作用があり、やや認知機能を落としてしまい、ボーッとさせてしまう副作用がある。

そのため、震えなどの身体的な症状だけを抑えるために、ベータ遮断薬としてプロプラノロール(インデラル)などを事前に服用する、という方法もある。

いずれにしろ、この種の恐怖症に対しては認知行動療法が比較的有効であることが分かっているので、より長期的にはこうした精神療法と組み合わせて、系統的な治療を行っていくべきだろう。

また社会恐怖の症状に対してSSRIの有効性も確認されてきており、此れらの薬剤を使用することもある。


34、全般性不安障害

この不安障害は特定の不安の対象があるわけではなく、いつでも何かが不安で仕方がないというもので、遺伝的研究的にも大鬱病と関連性があることが分かっている。

薬物療法では、抗鬱薬や抗不安薬が使用されることがあるが、適切な精神療法と組み合わせるべきだ。

其のうえで、ベンゾジアゼピン系抗不安薬を使用する場合、できるだけ依存性を生じさせないため、低力価、長時間作用型の薬剤(ジアゼパムなど)を使用した方が良いはずだ。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬を長期にわたって使用したところで、安全性に問題はないのだが、無計画にだらだらと治療に依存させてしまわないように、ある一定のところで薬物を引いていき、様子を見てみる努力をすることは必要だろう。


35、パニック障害

パニック障害の薬物療法においては、SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor 選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、三環系抗欝薬高力価ベンゾジアゼピン系薬物の有効性が知られている。

現在、日本ではSSRIの一つであるパロキセチンが唯一パニック障害に対する適応を取得しているが、他の薬物もそれぞれ特徴を持っており、状況にあわせて適切な薬物選択が行われるべきだ。
新しいSSRIもパニック障害の保険適応取得を目指して治験の最中らしい。

治療に用いられる薬剤

SSRI 

パロキセチン(パキシル)

パロキセチンはSSRIの中では、セロトニン再取り込み阻害作用が最も強力であり、かつその選択性も最も高いとされる。

治療用量としては一〇~四〇mg/日が用いられる。
半減期が長いため、一日一回の投与でも使用可能だ。

フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)

フルボキサミンは、日本で初めて発売されたSSRIだ。
治療用量としては五〇~二〇〇mg/日が、通常一日三回程度に分割して投与される。


副作用

SSRIは副作用が比較的少ない薬物として知られていますが、副作用の出現に対してはやはり十分な注意が必要です。

主な副作用としては、嘔気、下痢、便秘などの消化器症状、頭痛、眠気、不眠などがある。

此れらの症状は、投与初期に一過性に生じやすく、服用を継続すると徐々に軽快することが多い。

他に射精障害、性欲減退などの性機能障害も報告されている。

SSRI等のセロトニン作動薬投与時には、滅多に無いが、セロトニン症候群が出現する。

セロトニン症候群とは、錯乱、軽躁状態など精神症状の変化、焦燥、ミオクローヌス、反射亢進、発汗、悪寒、振戦、下痢、協調運動障害、発熱のうち、少なくとも三つ以上の臨床症状を伴い、セロトニン作動薬投与以外の原因が除外されるものをいう。

副作用と気づきにくいため要注意だ。


離脱症状

フルボキサミン、パロキセチンともに急激な減量、中断によっての離脱症状が知られている。

眩暈、異常感覚、不安、焦燥、抑欝気分、不眠、生々しい夢、頭痛などが主な離脱症状であり、場合によってはパニック発作再発との鑑別が困難になる。

減薬時には慎重に漸減すること、服薬の不用意な中断が生じないように注意せねばならない。

ベンゾジアゼピン系薬物

アルプラゾラム(コンスタン、ソラナックス)

パニック障害に対するアルプラゾラムの有効用量については、研究報告により大きな差がある

平均的用量は四~六mg/日であるとされるが、その後、より低用量でも効果が期待できるとされ、日本では1.2~2.4mg/日程度の用量で用いられることが多い。

ロフラゼパム酸エチル(メイラックス)

ロフラゼパム酸エチルは、アルプラゾラムに比して半減期が長いことから、治療中の離脱症状を生じにくいため、症状安定期に投与量を漸減する際に有利であると考えられている。
二~三mg/日の用量で使用されることが多い。

ロラゼパム(ワイパックス)

パニック発作出現時、あるいは前兆出現時の頓服処方としても使用しやすい。
一~三mg/日の用量で使用されることが多い。

クロナゼパム(リボトリール、ランドセン)

わが国では抗てんかん薬として承認されていますが、他のベンゾジアゼピン系薬物と同様、抗パニック効果が証明されている。



ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)

ジアゼパムについても、抗パニック効果を有することが示されているが、パニック障害の治療では通常の不安症状に用いるよりも高用量が必要との報告もあった。

副作用

ベンゾジアゼピン系薬物は、筋弛緩作用や鎮静・催眠作用を持つため、眠気、ふらつき、眩暈、脱力感、倦怠感などが一般的な副作用として挙げられる。
他にも、食欲不振、悪心・嘔吐、口渇、排尿困難、頭痛などがある。

また、ベンゾジアゼピン系薬物重症筋無力症、急性狭隅角緑内障を持つ患者は使用できない

ベンゾジアゼピン系薬物安全域が広いが、過量服用により急性中毒を生じた場合には呼吸抑制が問題となることがあります。

特に慢性呼吸器疾患を有する患者では、呼吸抑制をきたしやすいことが指摘されている。

離脱症状

ベンゾジアゼピン系薬物の急激な減量や中断は、反跳現象や離脱症状を誘発する。

反跳現象とは、投薬により抑えられていた症状が、薬物の中断後により強く出現するものをいう。

離脱症状としては、不安や不眠の悪化、食欲低下、振戦、頻脈、発汗、知覚過敏、感覚異常、眩暈などがあり、稀に、重症になるとせん妄や幻覚、痙攣を生じることがある。

ベンゾジアゼピン系薬物を中止する場合には、一~二週おきに四分の一程度ずつ、一日投与量を減量し、四~八週間かけて、漸減するよう処方される。

患者も従わなくてはいけない。

三環系抗欝薬

イミプラミン(トフラニール、イミドール)、クロミプラミン(アナフラニール)などが抗パニック効果を有するとされている。

SSRI登場以前はパニック障害治療によく用いられていたが、副作用の多さのため、SSRI登場以後は使用頻度が低下している。

しかし、他の薬剤で症状の改善がみられない場合や、重度欝病を合併している場合などには、三環系抗欝薬の投与も検討され得る。



副作用

三環系抗欝薬に共通する副作用として、口渇、便秘、排尿障害、起立性低血圧、頻脈、かすみ目、ふらつき、眠気、心伝導系への影響などがある。

此れらは主に抗コリン作用によるものであり、患者が服薬を自己判断で中止してしまう原因となることが多いので、副作用についてよく説明を聞いておくこと、少量から投薬を開始し、漸増していくこと、が患者側にも要求される。

逆に急激な減量、中止悪心、嘔吐、下痢、アカシジア(静座不能)、パーキンソン症状などの離脱症状を引き起こすこともある。

其の他の薬物
プロプラノロール(インデラル)などのβ遮断薬がパニック障害の治療に有効性を示すこともあるが、その評価はまだ一定していない

抗てんかん薬であるバルプロ酸(デパケン、バレリン)も、パニック障害に対する効果が期待されている薬物の一つであり、いくつかの報告は其の有用性を示すが、現在のところ他の薬物に優先して使用するだけの根拠は無い


36、不眠症

不眠症はいろいろな身体的・精神的疾患に付随した症状の一つであることが多く、ただ眠れないから眠れるようにすれば良いという問題ではない。

しかし原因がどうであれ、眠れないことは、其れ其のものが大きな苦痛になるため、行動療法的、薬物療法的な介入を考慮していくことは正しいことではある。

基本的には、まず正常な睡眠習慣を妨げている習慣を是正することから始めるべきだ。

具体的には、昼寝や夕方などの変な時間に居眠りをする習慣を止める、不適切な薬剤を服用していたり、コーヒーなどの刺激物やアルコールを摂取するのを止める、寝室は暗く、静かなものにし、寝るためだけの場所にする、睡眠についての強迫的な思い込みや行動を止める、などがある。

其の上で、さらに必要であれば、ベンゾジアゼピン系の睡眠鎮静剤を使用していくことになる。

ベンゾジアゼピン系の睡眠鎮静剤は、適切な用量を使用すれば、どれも似たような作用だが、作用時間の長さによって多少選択されていくことになる。

一般に長時間作用型の薬剤は、より熟眠感が得られ、早朝覚醒が少なく、より日中の不安が軽減できるメリットがあるが、其の分日中に眠気が残る感じがある。

他方の短時間作用型は日中の眠気を持ち越すことは殆どないが、反跳性の不眠や依存性の問題を起こすことがある。

また、どの薬剤も、服用後にお酒による「ブラックアウト」と類似した認知障害を起こすことがある。

さらに老人に使用する場合は、転倒や認知機能障害によるせん妄症状の悪化などの問題もある。

老人に対しては、安全性のため、非ベンゾジアゼピン系のゾルピデム(マイスリー)が好んで使用される。


37、アルコール離脱症状、バルビタール離脱症状、ベンゾジアゼピン離脱症状

ベンゾジアゼピンは、アルコールやバルビタール系薬剤と交差耐性があるが、此れらの中で一番安全性が高いため、離脱症状の置換療法に使用される。

臨床的に最も出会うことが多いアルコール離脱せん妄は、大量の連続飲酒を中断した数日後からせん妄、振戦、不安、自律神経症状、などで生じている。

放っておくと、けいれん発作を起こすなど、生命の危険を伴う重篤な状態になり得る。

自宅で散々大量飲酒をしてきた人が、急性の内科的疾患を起こしたり、事故を起こしたりして、救急病院に入院となり、数日後からせん妄症状を示してくる、というのがもっともよくあるパターンだ。

この問題に対しては、やや大量のベンゾジアゼピンが必要になることが多く、症状に合わせて用量は変えていくべきだ。

ジアゼパムにして一日一五- 四〇mgを要することになるだろう。

アルコール幻覚症を伴う場合には、高力価の抗精神病薬を少量(ハロペリドールで三-六mg)使用することもあるが、ベンゾジアゼピンの代わりになるものではない

鎮静を目的に、低力価の抗精神病薬を使用することは、てんかん閾値を下げてしまう問題があるために、勧められない。

離脱症状がコントロールされたら、置換に使用したベンゾジアゼピンを引いていけば良いのだが、ジアゼパムなど低力価、長時間型の薬剤は其れほど手間取らないで良いだろう。

其の他の用途への使用

ベンゾジアゼピンには、非特異的な抗不安効果があるので、鬱病に伴う不安、焦燥感躁病に伴う不安、焦燥感、興奮統合失調症に伴う不安、などいろいろな不安や焦燥感、興奮に対して、対症的に使用されることが多い。

また抗精神病薬の副作用である、アカシジア等に対しても有効だ。


38、其の他の薬剤

神経刺激薬(アンフェタミン類)
神経刺激剤として現在日本で比較的広く使われているのはメチルフェニデート(リタリン)だけだ。

分類上は「抗鬱薬」となっているが、本当の意味では抗鬱薬ではなく、此れまでの研究でも抗鬱効果ははっきりしない。

其の上非常に乱用されやすく、依存を生じてしまう傾向が高く、乱用によって大量に使用された場合、幻覚妄想などの症状を生じてしまう可能性があるために、使用されるにしても、ごく限られた適応に対して、非常に慎重に使用される種類の薬剤だ。

神経刺激剤モノアミン系のシナプスに働き、ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニンなどの放出を促し、其の再取り込みを若干阻害し、モノアミン系を賦活する作用がある。

こうして意欲を向上させ、ADHDにおいては集中力を高める働きにつながっていると考えられるが、副作用としては食欲が低下すること、覚醒レベルが上がるためにイライラ感や不眠、不安を生じやすいこと、乱用や依存を生じやすいこと、幻覚妄想などを生じることがあること、などがある。

現在のところ、臨床的な実際の適応は、小児のADHD成人のナルコレプシー、器質性の抑鬱・意欲低下状態、くらいだろう。

メチルフェニデートは経口で摂取されると、一、二時間で血中濃度が上がり、効果は数時間しか持続しない

このため通常は朝、昼前、昼過ぎ、くらいの一日二回から三回の投与になる。

夜間不眠になることを防ぐため、夕方の投与はしないことが普通だ。

小児であれば〇.三~一.五mg/kg/dayであり、成人であれば 三〇-六〇mg/day程度になるだろう。

なお、メチルフェニデートをどうしても妊娠中に使わなくてはいけない状況はないだろうから、催奇性がどうであれ、妊娠中は使用すべきではないだろう。


39、ドネペジル

ドネペジル(アリセプト)は脳内のコリンエステラーゼを可逆性に阻害し、アセチルコリン系を賦活する作用がある。

アルツハイマー病において、コリン系の低下が物忘れなどの症状につながっていると考えられていることから、現在軽度から中等度のアルツハイマー病に対して使用されており、効果が認められている。

しかし、アルツハイマー病において低下しているのはコリン系だけではないことや、結局のところ進行性の疾患であるアルツハイマー病に対して対症療法的にこの薬剤を使ったところで、時計の針を若干戻したことにしかならないことなど、問題はある。

また入院を要するような重症のケースでは、この種の薬剤の効果は殆ど認められず、出番はないと考えて良いだろう。

ドネペジルは、米国では此れより先行していた同種の薬剤であるタクリンにあったような、ひどい下痢や肝機能障害などの副作用が殆どなく、臨床的に使用される五-一〇mgでは殆ど問題なく使用することができる。

ベータ遮断薬
ベータ遮断薬の多くは、高血圧症や頻脈など循環器系の疾患の治療に使われているが、精神科に於いては若干特殊な用途がある。

よく使用されるのは、社会恐怖、対人恐怖にともなう自律神経症状である動悸、発汗、震え、などの身体症状を抑えること、抗精神病薬の副作用であるアカシジアを抑えること、リチウムの副作用である振戦を抑えること、老人性痴呆などに伴う暴力性、攻撃性を抑えること、などの目的だ。

実際に緊張する状況に入る前に、頓服としてプロプラノロール(インデラル)一〇mgを内服することもあるし、其の他については、大体プロプラノロールで一日三〇mg程度くらいで適当だろう。


40、鬱病は心の骨折と思う

「鬱病は心の風邪」なんて言葉が、少し前に流行りましたが、重度欝歴十三年のわたしは、少し違うな、と最近思います。

風邪、っていうと、軟弱だとか、気合で治るとか、言い返されてしまいます。
鬱病はもっと重症なのです。

風邪なら気合で何とか押し通せるけど、足を骨折してる人に向かって「走れ!」とは誰も言いませんよね
其のレヴェルなのです、欝ってのは。

物理的な怪我なんです。漠然とした体調不良や気分抑圧とは違うのです。
休ませてあげてください。休んでください。
ひたすら眠らせてあげてください、ご家族を、ご自身を。
責めないでください、かかわる誰もがみな辛いのです。
見ている人も、見られている人も。


確かに最近、わたしが通院する病院にも自称鬱病の偽患者さん駆け込みが相次ぎ、医師を困らせていますが、本物の鬱病患者は、自分が病気だとなかなか認めようとしません。

わたしの場合も、「そう言ってわたしを休ませてポストを乗っ取るつもりだろう」だの「皆がわたしを嫌って遠ざけようとしている」だの、周りを困らせ、決して仕事を休みませんでした。

で、気が付いたら体重二十五キロ
内臓下垂、血圧低下、意識朦朧、摂食障害(拒食)、不眠、と、雑多な症例が溢れ出て、強制入院させられ、拘束され、やっと自分を病気と認めたのです。

遅かったですが。
今なお、記憶障害が後遺症として残っています。

夫に馬鹿丁寧な言葉遣いで挨拶したり、母を上司か部下かと間違えて、暴言と思慕を交互に連発したり。
自分の言動を、三十分もすると忘れてしまう。

朝何を食べたか、のレヴェルでなく、食べる、という行為の意味まで忘れてしまう
なのに他人の食事を作ることは忘れない、ってか、身体がスケジュール通りに勝手に動き、働いてしまう
掃除も洗濯も欠かせない。
休むということが怖い
だから絶えず何かやっていないと気が済まない。
動き回る。疲れ果てる。でも眠れない。くすりだけが増えていく


41、人格障害~壱

二〇〇五年十一月一日午前二時、悪友が三度の逮捕をされた。
彼は、ある医師に言わせると人格障害者、別に医師に言わせれば詐病多重人格者、だ。

未成年のとき捕まって保護監督、次は二十二歳で執行猶予、今年三月にまたもや執行猶予、というか被害者の恩赦で不逮捕処分、今度本当に放り込まれた。

人格障害、心霊やUFOやUMAと同じくらい、不確定で、信不信の分かれるものだ。

カールシュナイダーが精神病質論を発表して以来、有名になった人格障害

政治的にナチスなどに利用され、精神科領域の暗部として、研究が遅れている

其れは「生まれつきで治らない」「性格だから治療できない」「個性である」「政治に利用されやすい」など、色々と意見はある。

しかし近年大量殺人事件などが多く発生し、注目されてきている。
其のメカニズムの研究や処遇の検討が望まれる。

精神科に多く訪れる人格障害は、統合失調症型人格(分裂病型人格)の反応性の病気であろう。

つまり統合失調症と正常との間の人格を持った人は、独特の生き方をして、独特の感性、哲学、人生観を持っているために、様々なトラブルを起こしやすいのだ。

其れは少数派の悲劇とは言えないか?

多くは被害的であり、回りとの波長が合わないために孤立しやすい

この人格が、孤独を好み人嫌いというのはだ。

小さいときから孤独であったために、対人関係の訓練がうまく出来ていない事が、トラブル、被害念慮、人嫌いになる原因になってしまったのだ。

また、生まれながらの狩猟民族的性格もあるかもしれない。
正義感が強く、戦闘を好み、臆病だが勇敢な性格である。

ヒステリー(無意識の仮病)型人格障害

統合失調症型人格障害の一つといえる。
幼稚で自己中心的であり、他人を利用し自分は楽をして快楽や収益をあげようとする。

芝居をして楽をしようとするものであるが、後天的なものか(育ちによるもの)先天的なもの(神経の構造的なものか)、何れなのかははっきりしない。

境界型人格障害

昔は統合失調症型人格障害を呼んだ。
が、最近は、常に不安があり、依存的で、何かに溺れやすい人格をさすようだ。

難治性のアルコール依存症など、依存症に良く見られる。
リストカット自殺未遂などが良く見られる。

多重人格

反社会性人格障害やヒステリーの一種とみる学者と、独立した疾患とみる学者がある。

行き所がなくなって、もう一人の人格をでっち上げ、其れの所為にして、自分はのほほんとしている、と見る治療者が、半分くらいいるのだ。

カウンセラーや精神科医など、人生の勝ち組の奴等には理解不能な、絶望的圧倒的孤独だ。


42、人格障害~弐

反社会性人格障害情性欠如型精神病質

情が薄いタイプである、つまり薄情、冷酷である。
また社会のルールに関心がなく、守ろうとしない傾向が強い。

程度はごく軽いものから大量殺人を平気で犯す重症まであり、アメリカでは百人に一人と言う割合で存在するという。
こういうタイプの人間が権力を持つと恐ろしい。

統合失調症の不全型、または統合失調症と関係あるという学者もあり、精神鑑定でも、ある学者は統合失調症と診断し、ある学者は反社会性人格障害と診断するケースが散見する。

今後の研究が待たれるが、米国などに比べ日本での研究は遅れており、その処遇も予算が少なく、犯罪を犯しても他の囚人と同じ刑務所に入れられたり、あるいは精神病院に入っていたりする。

イギリスのように膨大な予算をつけ、厳重な警戒の元、研究が進められるべきである。

この疾患の原因の一部は、妊娠時や出産時、生後の脳障害である。
先天的、家族的なものも当然ある。

特徴としては、社会のルールを全く理解しないか、殆ど理解しないというものだ。

極めて自己中心的で、本物の嘘吐きといえる。
本物の嘘吐きとは、自分が嘘をついているという自覚が無いものをいう。

重症のものは小学校四年くらいから発症し、小さな犯罪(万引きが多いようである)から、次第に学習して大きな犯罪に手を染めていく

知能は様々であり、程度も様々である。
人口に占める割合は一%位と言うが、白人、黄色人種、黒人では割合が異なるようだ。

白人には多いらしい。
重症のものは、犯罪は学習しても社会のルールは学習しないので、矯正はできないとされている。

矯正すればするほど犯罪を犯す、とさえいわれている

治療としては、抗精神病薬の投与や性ホルモンも考えられているが、効果は全く未定、不確定のままだ。

日本でも少年犯罪、または成年でも全く社会的ルールが欠如しているものの犯罪が急増している。

こうした状況を放置すれば、我が友人の如く、飯と寝どころを求めて、故意に犯罪を犯し、刑務所へ入りたがるようになる。

如何にすべきか、ま、他人のことなのだけど、超お節介のわたしは、自分の
ことも満足に為せないのに、奔走している。


自分を殺すとき

自分に刃を向けるとき
わたしやっと安らぐの
自分の血を舐めるとき
わたし心から嬉しいの
狂ってる
何時から
思い出せない
此れがわたしの病
記憶がどんどん欠落していく
技術や語学や法律は忘れない
徒自分の日常だけ忘れていく
こんな病聞いたこと無い
嗚呼そうだ当たり前だね
何を何時何処で如何に聞いたか
其れが思い出せないのだから
幸か不幸か
そんなの知らない
全く何も感じない
他人は憐れむけど
周りが哀れに思う
悲しくは無いの
丁度映画でやっているって
多分友達って人から聞いた
記憶を失っていくのは
傍から見るより
ずっときっと楽
喜怒哀楽が減っていく
掌の感情線が途切れる
いっそ生命線も切れて
辛くは無いけど
かなり疲れたの
生きるってのは
こんなに大変だったっけ
皆こんなに苦労してるの
なら皆で眠ろうよ
いい頃合冬が来る
皆冬眠しよう
全部無にして
地球を凍らす
きっと綺麗だ
今よりずっと
異星人に見せても誇れる
美しい瑠璃星
そんな光景を夢見て
自動的に刃を振るう
他動的に自殺を図る
こんなわたしなんか
生きていていいのか
誰かに教えて欲しい
堪えは異口同音に
YES
NOを言う勇気がないだけの
其処の優しい人へ
とても感謝しても
甚だしく迷惑だよ
自分で自分を殺すとき
わたしやっと自分になれる
わたしやっと綺麗になれる
汚い血と膿を流しては舐め
之ぞ究極の自給自足
自己完結型生命連鎖
忘れたい今も
忘れてく今も
忘れる瞬間が
一番の安定剤

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