Wednesday, February 15, 2006

鬱病の薬

1、トランキライザー Tranquilizer

トランキライザーは用法を間違えなければ怖い薬ではない。
穏やかな作用で、不安や緊張をときほぐしてくれる。

マイナートランキライザーとは、抗不安薬 (minor tranquilizer、antianxiety drugs) とも言い、精神疾患に使用される精神安定剤の一だ。

抗精神病薬 (antipsychotics , neuroleptics) とも呼ばれるメジャートランキライザーや、欝病の治療に使用される抗欝薬と比べると、作用も副作用も緩い。

マイナートランキライザーには、脳神経に作用し、不安や恐怖、緊張といった症状を緩和させる作用があり、パニック障害、不安障害、心的外傷後ストレス障害 (PTSD) 、急性ストレス障害、など不安を伴う疾患に幅広く利用される。
また、入眠剤 (睡眠導入剤) として処方されたり、手術の麻酔前に投与されたりもする。

現在、日本において一般的に利用されている抗不安薬の殆どは、ベンゾジアゼピン系とチアノジアゼピン系に分類され、抗不安効果は大同小異といったところだ。

他には、非ベンゾジアゼピン系もあり、ベンゾジアゼピン系に対して過敏症がでるなど、ベンゾジアゼピン系の薬物を投与できないときに代用される。

ベンゾジアゼピン系は、 GABA( ギャバ,γアミノ酪酸, Gamma-Amino Butyric Acid) という神経伝達物質の働きを増強します。

GABAは、体内で主に抑制性の神経伝達物質として脳内の血流を活発にし、酸素供給量を増やし、脳細胞の代謝機能を高める働きがある。
このため、脳内のGABAが不足すると、イライラしたり、体調不良を招いたり、延いては大病の原因となったりする。

GABAを受け取るGABA受容体には、GABA-A受容体とGABA-B受容体がある。
GABA-A受容体は、ベンゾジアゼピン系やバルビツール酸系と関連し、 GABA-B受容体は抗欝剤と関連する。

ベンゾジアゼピン系薬剤 (誘導体) がGABA-A受容体と結合すると、GABA-A受容体が活性化され、引いては抑制性神経が活性化される。
この結果として、眠気や脱力感を感じるなどの症状が現れる。

大半の抗不安薬は、かつて使用されていたバルビツール酸 (バルビツレート) 系に比較して安全性が高く、副作用も比較的少ない。

が、アルコールとの併用は避けるべきであり、同時に服用すると特有の副作用がある薬剤もある。
乱用すれば耐性や依存性、離脱症状が生じる恐れもある。
眠気を誘発するため、自動車の運転など、危険を及ぼす作業中に服用することは避けたほうがいい。

メジャートランキライザーは、名前からして、抗不安薬であるマイナートランキライザーよりも、作用が強力だと考えている方がいるが、基本的に作用機序も効果も薬物の種類も全く異なり、比較の対象にはならない。

統合失調症などは、これらの薬剤を中心とする薬物療法により七~八割は治療が可能だ。
しかし、いったん薬による治療がよく効き、症状が軽快した場合でも、薬の継続による再発予防治療をしないと、一年以内に九割が再発することがわかっている。
このため多くの場合は、いったん症状が完全に治った後でも、一~二年は再発予防治療、即ち維持療法の継続が勧められている。

抗不安薬 anxiolyticsは、ベンゾジアセピン系と総称される薬剤が主であり、代表的なものとしてジアゼパム、アルプラゾラム、などがある。
日本はこの種類の薬剤が非常に多いことが有名だが、効果はどれも同程度だ。
この種の薬剤の抗不安作用は極めて非特異的であり、統合失調症、欝病、不安神経症に伴う不安も軽減するはする。
だが、根本原因を治療してはいないので、飽くまで対症療法でしかない。

気分調整薬 mood stabilizersは、気分の波を穏やかにする作用があり、躁状態ばかりでなく、欝状態の治療や予防にも使用される。
躁欝病(双極性障害)、統合失調症に伴う気分症状の、抑欝気分や躁病状、神経症的な情緒不安定性などにも効果がある。
但し、日本では、抗躁薬=躁病治療薬としてしか認可されていない。

抗欝薬antidepressantsは、強迫症状やパニック発作や対人恐怖などの不安などにも使用され、欝病の場合、薬物療法を開始してから、数週間で効果を発揮する。
しかし治った後でも、特に最初の半年間くらいは再発の危険が高く、通常は維持療法として抗欝薬の継続を勧められる。


2、抗精神病薬とは?

抗精神病薬は、向精神薬の一種で、主に統合失調症躁状態の治療に用いられるが、それ以外にも幅広い精神疾患に使用される。
メジャートランキライザーとも呼ばれる。
英語名は、antipsychotics、neuroleptics、だ。

主に中脳辺縁系のドーパミン作動性ニューロンのドーパミンD2受容体を遮断することで、妄想、幻覚と言った精神症状を軽減させる。

また、脳の興奮状態を抑制させる作用を利用して、抗不安薬では取り除けないような強度の不安や極度の鬱状態、不眠に対する対処薬としても利用される場合もある。

抗精神病薬は、大きく定型抗精神病薬非定型抗精神病薬に分ける事が出来る。

非定型抗精神病は、従来の定型抗精神病薬と比較して、ドーパミン遮断作用に加えて、セロトニン遮断作用を有したり、緩いドーパミン遮断作用を有するなどの特徴をもった薬剤で、錐体外路障害、口が渇く、便秘と言った副作用が少なく、統合失調症の陰性症状にも効果が認められる。

副作用
一般的な副作用として、黒質線状体系のドーパミン拮抗作用による、パーキンソン症候群、アカシジア、急性ジストニア、遅発性ジスキネジアなど。

下垂体漏斗系のドパミン拮抗作用による、高プロラクチン血症による無月経、乳汁分泌、陰萎など。

ムスカリン性アセチルコリン拮抗作用による便秘、眼のかすみ、口渇など。

抗ヒスタミン作用などによる眠気、体重増加など。

α1遮断作用による低血圧、原因は不明であるが悪性症候群などがある。

また特に非定型抗精神病薬においては体重増加、糖尿病という副作用が見られることがある。


3、抗精神病薬(メジャー・トランキライザー) antipsychotics

抗精神病薬とは、其の名前の通り、主として精神病症状(幻覚、妄想、「考え」過ぎ」など)に対して、此れを抑えることを目的に使用される薬剤だ。

この種類 の薬剤は、基本的に脳内のドーパミン系を遮断することを主な作用として持っている。

精神病症状として、しばしば「陽性症状」と呼ばれる幻覚、妄想、考え過ぎによる思路の障害など、脳内の中脳辺縁系のドーパミン系の過活動によるものと考えられている。

此れを遮断することによって、其れらの症状を抑えていくことができていると考えられている。

抗精神病薬には、大きく分けて、低力価群、高力価群、第二世代(非定型)、がある。
この分類によって、主には副作用の種類と強さが違ってくると考えて、ほぼ間違いない。

力価とは、簡単に言うと、どれだけ効果的にドーパミン系を遮断できるか、ということを意味する。

高力価の薬は、少量で非常に効果的にドーパミン系を遮断できるので、通常数ミリグラムから十数ミリグラムで幻覚・妄想などの陽性症状に対して、十分な効果が得られることが期待できる。

また低力価の薬剤にありがちな、ドーパミン以外の其の他のレセプター(ヒスタミン系、アセチルコリン系、交感神経系)を遮断することによって生じる、様々な副作用が少ないことが特徴である。

しかし、一方でパーキンソン症状やジストニアなどの錐体外路症状が生じやすいことでも知られている。

此れに対して低力価の薬剤は、ドーパミン系への選択性が低いために、幻覚、妄想などの症状を有効に抑えるためには、通常数百ミリグラムもの用量が必要になっている。

またドーパミン系以外のレセプター(ヒスタミン系、アセチルコリン系、交感神経系)をも遮断してしまうために、様々な副作用が生じがちだ。

此れ等に加えて、近年開発されてきた「第二世代」と呼ばれる抗精神病薬は、低力価の薬剤にありがちであった副作用が少なく、また 高力価の薬剤にありがちであった錐体外路症状の副作用も少なく、そういった意味では非常に使いやすくなった薬剤だ。

抗精神病薬は、日本での保険適応は統合失調症ということになっている薬剤が殆どだ。
しかし、事実上全ての精神疾患に見られる精神病性の症状(陽性症状)に対して有効性があることが分かっている。

精神病というレベルにまでいかなくても、考え過ぎによる気分の不安定さや情緒不安定などに対しても、有効でありそうなことが分かっている。

気分障害である躁病症状を抑える作用(抗躁作用)、チックを抑える作用、精神遅滞に於ける衝動性や問題行動を抑える作用、などもある。

また、低力価群は副作用としての鎮静(眠気)が強いことが多いために、この副作用を逆手にとって催眠鎮静剤として使用されることもある。


4、ち、痴呆との診断……

廃用性痴呆、という聞き慣れない病名が、また昨日わたしにくっついた。
そんな病態が存在するのすら知らなかった。

何でも、可逆性と不可逆性があり、可逆性のものも進行すれば不可逆性になるとか。
脳神経細胞が萎縮して消滅してしまうのか。
将来的には非アルツハイマー型痴呆の範疇に入るのか。

医者の説明は分かり辛い。
 
マイナーあるいはメジャートランキライザーにより、精神活動が抑制されている場合、外界よりの知的刺激が低下する。
其の期間が長ければ、廃用性痴呆を生じると思われる。また、不可逆性痴呆はトランキライザーによっても生じる、なのだそ~だ。

痴呆の診断基準と廃用性痴呆について。

廃用性痴呆という病態を論じるためには、痴呆の定義が間題となる。
今日普及している痴呆の診断基準では、米国精神医学会による統計と診断のためのマニュアル(DSM)や、WHOの疾病分類によるものなど、いずれも痴呆を実用面から操作性に定義している。

痴呆が、かつて精神障害の終末像として不可逆性の病態を意味したものから、アルツハイマー病に代表される器質痴呆性疾患の病態と等価な状態像を意味するように、イメージが変化した。

こうした操作的な診断基準は、医療の臨床場面では適切なものだ。
用語に関する議論は棚上げし、色々な疾患により生じる状態像として、痴呆を定義するなら、廃用性痴呆の存在は否定できない。

かつて仮性(偽)痴呆として鑑別診断が重視された欝病は、今日でも重要な鑑別対象になっている。

一方で、アルツハイマー病(老年痴呆)の初期には、抑欝状態を呈するものが稀でない。

正常圧水頭症にせよ、欝病にせよ、長期間に渡り、高次精神機能が抑制され、廃用状態に陥り痴呆を呈した後でも、適切な治療により顕著に改善する例もある。

単に廃用のみでは、細胞死には至らないと考えるべきだそうだ。

廃用性痴呆とは、何もしないでぶらぶらと無為に時を過ごす身体的、精神的不活動状態に伴ってみられる痴呆症状だ。
いわゆる廃用症候群にみられる痴呆も、原疾患との関連で経過もさまざまらしい。

非アルツハイマー型痴呆とは、言葉通りにはアルツハイマー病以外の痴呆性疾患だが、欧米では、痴呆は歴史的にもアルツハイマー病、即ち原発性大脳萎縮性変性疾患をイメージすることから、今日盛んに取り上げられるのは瀰漫性レビー小体病に代表される変性疾患だ。

さらに今日の研究動向からは、アルツハイマー病と呼ばれているものも複数の亜型からなる疾患群である可能性が大きい。

加齢に伴う認知機能低下 (Age一Associated Cognitive Decline;AACD)

1、認知機能の低下が本人あるいは信頼できる情報提供者によって報告されること。

2、発症は緩徐で,少なくとも六カ月間持続。

3、認知機能の低下は以下の五領域のいずれか一つの障害によって特徴付けられること。
 (一)記憶と学習
 (二)注意と集中力
 (三)思考(例えば問題解決、抽象思考)
 (四)言語(例えば理解、喚語)
 (五)視空間機能

4、年齢と性別が統制された比較的健常な対象者に基づく標準データのある定量的な認知機能評価(例えば神経心理学検査あるいは精神状態評価)で異常があること。
成績は少なくとも適切な対象における平均値の一標準偏差を下回ること。

5、除外基準として、上記の異常は軽度認知機能障筈あるいは痴呆の診断を下されるほどではないこと。
身体的、神経学的検査あるいは臨床検査による客観的な証拠がないこと。
脳機能不全の原因となることが知られている脳疾患、損傷、機能不全および全身疾患の既往がないこと。

6、其の他の除外基準として、欝病、不安など顕著な精神疾患で認知機能に影響を及ばす可能性があるもの。
・器質性健忘症候群
・譫妄
・脳炎後遺症
・脳振盪
・精神活性物質や中枢神経作用のある薬物の使用

此れはかつて「良性老年性物忘れ」として論じられたものと同様で、本質的には広義のアルツハイマー病に含めるべきとする見解もある。

問題なのは、加齢に伴い大脳の神経細胞数は確実に減少し、神経原線維変化や老人斑といった変性所見が、生前に痴呆と診断されていない老年者でも認められるという事実だ。

わたしなど、ど~なるのだ???

老化の重要な側面として、普遍的で進行性不可逆性の有害現象であり、変性過程と共通する特徴を有することが挙げられる。

精神安定剤と痴呆

治療可能痴呆で第一に鑑別すべきものは薬物、特に抗精神病薬による認知機能低下がある。

睡眠薬や抗不安薬が、老年者の記憶や認知機能を障害することも多い。

通常は、細胞死を生じるほどの投与量が処方されることはない。
此れらの薬物は、アセチルコリン、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンといった神経伝達物質の産生や受容体に影響して効力を発揮するのだ。

抗精神病薬の長期投与により生じたパーキンソニズムが、薬物の中止によって、必ずしも改善しないことから、同様に不可逆性の痴呆症状を生じさせる可能性は否定できない。

その機序としては、神経回路機能が通常の社会生活に適応する様式とは異なる活動状態で持続することによる、不適切な神経回路網の形成、あるいは再編を生じる可能性と、其の回復を困難にする神経細胞絶対数の加齢に伴う減少が考えられる。

……って、医学書読んだって、訳分かンね~よ。

加齢による認知症なら理解できても、若年性且つ廃用性って、つまり、悪性リンパ腫での脳障害により、壊れた脳の一部が当然動かず、記憶再生機能が失われていく、ってことか???

わたしの場合、技術、学術、運動能力、語学力に影響が無いが、日常をどんどん忘れていく。
此れは、怖い。
今朝食べたものが分からないどころか、食べたかどうか、更に朝出かける前に食事をするものか否か、もっと進んで、食事という行為自体の意味が分かからなくなる。

ど~にかしてよ~、なんでか仕事やら勉強やらは出来るのだけど。
日常生活にも支障は無いけれど。
自分が壊れてゆくのが、分からないところが恐ろしい。
壊れていなかった頃を思い出せないから、壊れた現況も分からないのだ。
ただ、母が可哀想。
「忘れた?」
って訊くときの悲しそうな顔が、見ていて辛い。
だんなも可哀想。
殆ど一緒に暮らしていないから、偶に誰だったかわからず、馬鹿丁寧な言葉で応対してしまう。

虚飾や過食嘔吐で悩んでたときもあったらしいが、覚えていない。
この二ヶ月で、一気に脳障害は進んだらしい。

飽くまでも、らしい、のだ。

偶にフラッシュ・バックが起こり、パニくる。
生きていけるのだろうか???
最近は、HPやブログに頼って、日々を書き留めているだけ。気が付くと英語で喋っていたり、手書きの文字もアルファベット化している。
三つ子の魂百まで、だ。

日本語は、指が勝手に動いてくれるので、打ち込めるが、書くのが難しい。大学行くと旧仮名遣いの法律と向き合う。
が、其れは別の部分が働くらしく、ちゃんと理解できる。
なぜか日常だけが欠落する。
怖い。


5、鬱病薬~低力価群(クロルプロマジン、レボメプロマジン、など)

低力価群の抗精神病薬には、クロルプロマジン(コントミン)、レボメプロマジン(レボトミン、ソフミン)、チオリダジン(メレリル)などがある。

此れら低力価の薬剤に、十分な抗精神病作用を期待するためには、通常数百mgもの用量が必要になる。
ドーパミン系への選択性が低く、ヒスタミン、ア セチルコリン、交感神経系などにも作用してしまうために、以下のような副作用が多いことも特徴だ。

抗ヒスタミン作用:眠気、だるさ、など
抗コリン作用:口渇、便秘、かすみ目、性機能障害、など
アルファ遮断作用:起立性低血圧、逆行性射精、など


こうした副作用上の問題があるために、低力価の抗精神病薬を、抗精神病作用を期待しての主剤として使用することは、余り多く無い

其れよりも寧ろ、其の鎮静作用を期待し鎮静剤として、或いは睡眠を補助するための薬剤として、使用することが多いろう。

なお、低力価群は副作用でもある抗コリン作用のために、錐体外路症状は表れにくくなっており、抗コリン剤と併用しなくても大丈夫なことが多いという利点はある。

さらに、チオリダジン(メレリル)はQTc延長という副作用もあり、最近では積極的に使われることは少なくなっている。

其の他の副作用として、次のものは低力価でも、高力価でも、さらに第二世代でも問題になるものとしてある。

代謝系、ホルモン系への影響:下垂体からのプロラクチンの分泌を抑えているドーパミン系をブロックするために、高プロラクチン血症が起こることがある。

このため月経不順、乳汁分泌、性欲低下などの副作用が生じることがある。
臨床的にはスルピリド、リスペリドン、などで経験されることが多いが、殆ど全ての抗精神病薬で生じる可能性のある副作用だ。

また肥満傾向を生じやすいという副作用もある。
肥満になることに関連し、糖尿病や高脂血症のリスクも上がる。
この副作用は近年第二世代の薬剤についてだけ話題になることが多いものだが、事実上全ての薬剤にこの副作用は起こりうるものだ。

ただし、其の傾向の強さについては、薬剤によって違いがあり、特にクロザピン(日本では未発売)、オランザピン(ジプレキサ)に其の傾向が強く、 ハロペリドール、リスペリドン、クエチアピンなどは其の傾向が弱いという研究結果が出ている。

ただ日本ではクエチアピンは糖尿病禁忌となっている。
其の科学的根拠は幾分乏しいが、厚生労働省が禁忌としているのだ。


6、鬱病薬~高力価群(ハロペリドール、フルフェナジン)

高力価群の抗精神病薬には、ハロペリドール(リントン、レモナミン)、フルフェナジン(フルメジン)、ブロムペリドール(インプロメン)などがある。

高力価の薬剤は、ドーパミン遮断作用の選択性が比較的高く、数mg~十数mgという用量で十分な抗精神病作用を発揮し、抗コリン作用、アルファ遮 断作用、抗ヒスタミン作用などが少ない

このため、低力価群で目だって出てきてしまう副作用が、圧倒的に少ないため、第二世代の抗精神病薬が出てくるまでは、抗精神病作用を期待して使用する薬剤としては主力となっていた。

しかし錐体外路症状が比較的出易いという大きな問題がある。
このため極めて少量で使う場合以外は、抗コリン剤と併用されることが多いことになる。

錐体外路症状としては、以下のようなものがある。

薬剤性パーキンソニズム:手指の細かい振戦、全身の動きの硬さ、小刻み歩行、など。

ジスキネジア:大量の高力価群を長年使用している患者に見られることが多いが口唇のモグモグするような不随意運動。

ジストニア:急に筋肉が引きつるものであり、頚部から顔面、眼球運動に多い。特に眼球は上転することが多く、「眼球上転発作occulomotor crisis」と呼ばれている。

アカシジア:日本語では静座不能とも呼ばれ、主に下半身のむずむずした落ち着かない感じになることで知られている。


此れは統合失調症などで見られる精神病性の「もやもやした不安」などと区別が難しいこともあり、またunderdiagnosisされがちであると言われているが、患者にとってみると非常に不快な症状であり、さらに自殺行動との関連性も指摘されており、できるだけしっかり見つけて対 処する必要のある副作用だ。

此れらの錐体外路症状の大部分は抗コリン剤の併用で軽減されることが多い。アカシジアに対してはβブロッカー(インデラル)やベンゾジアゼピンなど が使用されることもある。

通常、抗精神病薬を十分量使用しても抗精神病作用が出てくるまで二週間程度はかかる。鎮静作用や其の他の副作用はすぐに出ているけど。其の間は 焦らずゆっくりと効果を見ていく忍耐力が必要だ。


7、鬱病薬~第二世代(リスペリドン、オランザピン、クエチアピン)

高力価抗精神病薬は幻覚妄想などの抗精神病作用が非常に優れているだが、錐体外路症状が起こりやすく、また陰性症状には殆ど全く効果が無いばかりか、薬剤性の二次性陰性症状を生じてしまう難点があった。

こうした欠点を改善したのが、第二世代の抗精神病薬だ。
第二 世代抗精神病薬がどうして錐体外路症状が少なく、また陰性症状にも効果がある可能性があるのか、といったことには不明な点が多い。

しかしどれもドーパ ミン系だけでなく、セロトニン系をもブロックする作用がある点で共通している。

どれも圧倒的に錐体外路症状が少ないこと、鎮静作用が少なく精神的にも身体的にもだるくなりにくいこと、低力価群にあるような副作用も殆どないこと、などの利点で共通している。

ただし、クエチアピン(セロクエル) は鎮静作用がかなり強くあるし、オランザピン(ジプレキサ)は抗コリン作用が結構ある。

クエチアピンについてはプラセボと比較しても、殆ど錐体外路症状の出現率が変わらないほどに錐体外路症状が出にくいのだが、オランザピンもリスペリドン(リスパダール)も用量をあげていくと幾分かは錐体外路症状が出る可能性がある。

リスペリドンでは六mg以上、オランザピンでは一〇mg以上使用するときは出てくるかもしれない。

さらに、オランザピンでは体重増加、肥満といった代謝系への影響が出やすいことが分かっている。このため糖尿病や高脂血症といった代謝系の疾患に対する注意が必要になっている。


8、鬱病薬~妊娠中、授乳中の問題

いささか、古い書籍からの抜粋ですので、現在の医学では安心かも。
とはいえ、つい最近、パキシルが胎児に奇形を及ぼすことが判明したばかりだ。(二〇〇五年九月)

殆どの抗精神病薬は、胎盤を通過し、胎児血中や羊水中に移行する。
此れまで最もよく調べられているのは、古い薬ということもありデータが蓄積されている、というだけらしいが、クロルプロマジンであり、此れについては明らかな催奇性は認められていない

クロルプロマジンについても、他の抗精神病薬についても、明らかな催奇性はないとしても、データが十分にあるとは言えないため、できることなら妊娠中は使用しない方が良い、と普通は考える。

しかし、抗精神病薬を使用しなくてはならない精神科疾患の大部分が、長期的な治療が必要なことを考慮して、妊娠中に抗精神病薬を中止することのメリットとデメリットを十分に患者、家族と話し合って決定していかなくてはならない。

なお、双極性障害の躁病エピソードにおいて、気分調整薬は明らかな催奇性があるために、 抗精神病薬にスイッチすることを勧める意見もある。

いずれにしろ、妊娠の初期は催奇性の問題があるため、できるだけ薬剤は使わないという一般的な考え方は、抗精神病薬についても言える。

妊娠の後期については、抗精神病薬を使用していると、新生児に錐体外路症状が見られることがあるため、可能であれば、出産二週間前に止めるよう勧められる。

しかし一般に、出産前後や産褥期には精神症状が不安定になりやすいので、此処でも中止すること のメリットとデメリットをよく考慮していかなくてはなりない。

授乳中、抗精神病薬は乳汁中に分泌されるが、比較的低濃度であることが分かっている。

しかし発達中の子どもに対する抗精神病薬の影響は不明なことが多いため、できれば母乳ではない方法で養育することが勧められる。


9、鬱病薬~各疾患に対する抗精神病薬の使用急性精神病状態 acute psychosis

急性精神病状態は、統合失調症の初発、急性増悪、感情障害、器質性精神障害、覚せい剤など薬物によるもの、などいろいろな原因で起こっている。

臨床的に最も多いのは統合失調症によるものだろう。
患者は通常極めて思路障害が強く、混乱し、興奮し、時に自傷や他害の危険を伴う。

このためできるだけ早く治療を開始することが必要だが、どの原因によるものであっても、この最初の急性精神病状態に対する治療の仕方は大体同じであり、以下のように抗精神病薬を使用することになる。

現在では急性精神病状態に対して第一選択と考えられているのは、第二世代の抗精神病薬だ。

理由は古い古典的抗精神病薬(ハロペリドールやクロルプロマジ ンなど)に比べて錐体外路症状の頻度が低く、特に悪性症候群のリスクや遅発性ジスキネジアのリスクが低いと考えられるからだ。

また一時期は古典的抗精神病薬に比べて、第二世代の抗精神病薬は作用発現が遅いのではないかといわれてきたが、最近の研究ではそうではないことが示されているからでもある。

いずれにしろ、抗精神病薬による治療を開始してから、十分な抗精神病作用が出てくるまで二週間から四週間は必要と考えるべきだ。

統合失調症の急性期であっても、躁病エピソードであっても、使用されるべき抗精神病薬の用量は大体同じだ。

ハロペリドールにして十mg程度まで、リスペリドンにして六mg程度まで、オランザピンにして二十mg程度まで、クエチアピンにして、三百mgから六百mg程度までが普通だろう。

此れよりも高用量になると、特に古典的抗精神病薬では、錐体外路症状などの副作用が強くなり、患者が治療を嫌うことが多くなる。
一割から二割程度の患者は、幾つかの抗精神病薬を使用してみても、あまり十分には改善しないことがある。
其の場合にも、用量を増やすだけでは殆ど無意味だ。

米国では、このような治療抵抗性の症状に対してはクロザピンの使用が勧められているが、日本では未発売のため使用不可能だ。

多くの場合リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン などの気分調整薬を併用するadjuvant therapyが勧められている。

抗精神病薬が十分に効果を発現するまでには、二週間以上という比較的長い時間を待たなくてはならない。

其の間患者に非常に興奮が強い場合は、鎮静が必要になるだろう。

米国では大量のベンゾジアゼピンを使用することが勧められているが、日本では鎮静作用の強い、低力価の抗精神病薬を併用することが実際には多く行われている。
もちろん、症状が改善し興奮がなくなってきたら、此れらの薬剤は引いていくべきものだ。


10、統合失調症(精神分裂病) schizophrenia

統合失調症は単一の疾患と考えるよりも、幻覚妄想、思路障害、実行機能・自発性の低下などの症状的な特徴が共通する疾患群の総称と考えた方が正しいだろう。

症状も予後も様々だ。

一般的に、統合失調症の症状は、異常な病的体験があるという、陽性症状positive symptoms(幻覚、妄想、関係念慮、思路障害など)と、普通はあるはずの正常な感情、思考過程が落ちているという、陰性症状negative symptoms(思考内容の貧困化、集中力、注意力の低下、感情の平板化、自発性の低下など)とに分けて考えられる。

此れまでの抗精神病薬は、陽性症状に対しては効果が高いものの、陰性症状に対してはあまり効果がないと考えられてきた。

そして、其れはまあ正しいのだが、急性期に見られる陰性症状的な症状(社会的引きこもりなど)に対しては、意外に効果があるし、全ての陽性症状に効果があるわけではないことも事実だ。

新しい第二世代の抗精神病薬は、こうした陰性症状、欠陥症状に対しても効果が期待されているが、其れがどの程度そうであるのかは、まだ不明な点が多い。

抗精神病薬は、統合失調症の急性増悪における症状の軽減にも、再発予防にも効果があることが分かっている。

長期に渡る再発予防の治療は、維持療法 maintenance treatmentと呼ばれるが、此れを行わない場合、一年以内の再発は六五%から八〇%にも上るのに対して、抗精神病薬による再発予防を行うことによって、其の確率を二五%以下にまで低減させることができると見られている。

統合失調症による症状や、其れによる社会的な影響(失業や家族其の他の対人関係の 問題化など)を考慮すると、多くの患者は長期にわたる再発予防治療が有益になるであろうと思われる。

しかし、抗精神病薬を特に大量を長期に使用することは、遅発性ジスキネジアなどの副作用的な問題もあるため、十分によく考慮したうえで判断していくことになる。

治療抵抗性の症状がある場合などに、高用量の抗精神病薬が使用されることがあるが(ハロペリドールにして二〇mg/day以上)、高用量の抗精神病薬を使用したした方が、より効果があがるとする科学的な根拠は乏しく、むしろ副作用が目立ってくることになることの方が確実だ。

11、躁病エピソード

抗精神病薬は、躁病エピソードに伴う精神病症状に効果があるほか、其れ其のものに直接的な抗躁効果もあるが、基本的に躁病エピソードは、気分調整薬である、リチウムやバルプロ酸によって治療を行うことが第一選択だ。

しかし、気分調整薬は其の効果が出てくるまで二週間程度を要するために、其の間待つことができないほどの著しい逸脱行動や危険行動がある場合、著しい思考の混乱や精神病性の症状を伴う場合、急速な鎮静が必要な場合などには、急性精神病状態の治療に準じて抗精神病薬が併用される。

また、妊婦の場合はリチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンには明らかな催奇性の問題があるために、患者、家族とよく相談した上で、より催奇性の少ない抗精神病薬を使用することになる。

気分調整薬が十分な血中濃度に達して、症状的にも改善を認めてきた時点で、抗精神病薬は少しずつ引いていくことができる。

躁病エピソードに対しては、古典的な抗精神病薬も、第二世代の抗精神病薬も有効であることが示唆されている。

双極性障害の再発予防のための維持療法に於いては、基本的にリチウムやバルプロ酸などの気分調整薬を主体とすべきであって、抗精神病薬は錐体外路症状や 遅発性ジスキネジアのリスクの問題などから、一般的には勧められるものではない

しかし、十分な気分調整薬を使用していても予防が十分にできない場合や、rapid cyclerで抗精神病薬が安定化のために必須のものである場合などは、少量の抗精神病薬を使用し続けなくてはならなくなる。

この場合、錐体外路症状の出現が少なく、其れゆえ将来的に遅発性ジスキネジアの出現リスクも少ないと考えられる、第二世代の抗精神病薬を使用した方がよりよいだろう。

精神病症状を伴う鬱病について
妄想などの精神病症状を伴う重症の鬱病は、抗精神病薬単剤、或いは抗鬱薬単剤で治療するよりも(反応率は三〇%から四〇%)、抗鬱薬と抗精神病薬との併用で治療した方が、より効果的である(反応率七〇%から八〇%)ことが分かっている。

この病像においてはECTが最も効果的であることが分かっているので、薬物療法が反応しない場合、或いは重症度が高く、早急に症状の改善が求められる場合には、ECTを選択することになるだろう。


12、統合失調感情障害(分裂感情障害)schizoaffective

統合失調感情障害は、抑鬱症状や躁症状がありながら、其の感情症状が比較的治まっている時期にも幻覚・妄想や思路障害などの精神病性の症状が残ってしまう疾患群を指す。

感情症状に対しては抗鬱薬や気分調整薬(リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン)が有効だが、精神病性の症状を併せ持つために抗精神病薬が併用されることになる。
用量などは統合失調症の場合と殆ど同じだ。

器質性精神病および譫妄

譫妄脳の全般的な機能低下を反映する症状であり、通常内科的な緊急事態のもとに起こっている。

だから、譫妄の治療の基本は、内科的な疾患の治療・管理と、そして譫妄に対する治療になる。

譫妄状態の患者は、生命維持に必要な点滴ラインを自己抜去、ベッドから転落するなどの危険行為のリスクが極めて高いために、常に観察できるようにしておき、場合によっては身体拘束も必要になるだろう。

アルコール離脱、ベンゾジアゼピン離脱、バルビタール離脱による譫妄は、通常ベンゾジアゼピンによる置換療法を行う。

アルコール離脱譫妄は臨床的によく出会うものだが、此れに対して抗精神病薬は勧められない

また抗コリン剤による譫妄についても、抗精神病薬は抗コリン性の副作用があるため、お勧めできない

其の他の譫妄、特に老人の痴呆をベースに持つものに対しては、少量の高力価抗精神病薬が使用できる。

高力価のハロペリドールがよく使用されてきた訳は、この薬剤は心血管系への影響が少なく、呼吸抑制も殆どなく、抗コリン作用も少なく、注射薬などもあり投与しやすいことなどがある。

此れに対して低力価の抗精神病薬は、てんかん閾値を下げること、起立性低血圧のリスクがあること、抗コリン作用が強いこと(便秘、抗コリン性のせん妄などを引き起こし やすい)、などの理由から、お勧めできない
老人の場合、ハロペリドール一mg二xくらいで対応できることが多いろう。

譫妄の治療を、急性期以降も長期的に行う場合には、錐体外路症状の少ない第二世代を使用するほうが良いだろう。
老人の場合は特に錐体外路症状を起こしやすいからでもある。

パーキンソン病の患者は、L-dopaによる治療の副作用として、あるいは痴呆症状を併せ持つことによって、精神病症状を呈することがある。

この場合錐体外路症状の生じにくい第二世代抗精神病薬第一選択になる。
クエチアピンが最も錐体外路症状を引き起こさないことで知られているが、鎮静作用が若干強いので注意すべきだ。

パーソナリティー障害 

抗精神病薬は、遅発性ジスキネジアなどの副作用的な問題もあり、また有効性が明らかでない場合が多いため、精神療法を含め他の治療法が全てうまくいかなかったときにだけ考慮されるべきものだ。

抗精神病薬は、境界性人格障害など重症のパーソナリティー障害の治療において、精神病性の思考障害がある場合、衝動性・攻撃性の問題がある場合、などに使用されることがある。

確立された用量はないが、ハロペリドールに換算して一日一〇mg以上というのは、臨床的な意味があるとは思えない。

錐体外路症状の少なさ、其れによる遅発性ジスキネジアのリスクの低さの点からは、第二世代の抗精神病薬の方がお勧めできるだろう。

APAの治療ガイドラインでも、境界性人格障害に対する治療の中心は精神療法であるということになっており、また薬物療法を補助的に使う場合であっても、其の中心はSSRIなどであることになっており、抗精神病薬はさらに補助的な役割になる。

この場合、少量の抗精神病薬衝動コントロールの問題、抑鬱状態や気分不安定、微妙な現実検討の障害などの症状を若干改善することが示唆されている。

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