Wednesday, June 07, 2006

Mortification

朝っぱらからワインを飲んだ。
夜の仕事(プログラミング)が終わって、米国の仲間とチャットでお祝いしたのだ。
皮肉屋のわたしは達は論議した。

醗酵と腐敗は紙一重だ、と。

葡萄の果汁が腐る一歩手前を、わたし達は有難がって高い金を出し飲んでいる。
ビアも然りだ。清酒だってジンだってウォッカだって、皆腐りかけの絞り汁だ。

人間にも当て嵌まると思う。

成長と老化の境目はいつにあるのだろう?

赤ん坊の目が出来外耳が見えれば成長で、成人に小皺やしみが見え始めれば老化とする。
成長期は十六歳までだろう。其れが過ぎればもう老化になるのではないか?
そう考えると、わたし達は人生の圧倒的時間を老け込むために生きている。
なんだか悲しい。
多分其の悲しみを埋めるために、生き物は老化の途中で子を産み育て成長を見守るのだろう。
そして其の子にまた老化が始まると、今度は孫、曾孫をと、何らかの成長を追い続ける。

其れでも埋まらなければ、寿命の短い他の動物を飼育し始める。
僅か二十年未満の犬はうってつけだ。
ハムスターは寿命が短過ぎ、子を産み過ぎる。
従順な犬は本当に人間に与えられた、というか、狼を人間が改造して無理やり作出した、玩具だ。
わたしも其の玩具で遊び、慰められている一人だ。
わたしには子供がいないから。出来ないから。授からないから。
正直、子供を生んだというだけで、わたしから見ればもう尊敬すべき立派な偉人だ。

子供は親族私有のものではなく、社会の宝だ、国の将来を担う金の卵だ、などと当然のことを政治屋が公言せねばならない日本の未来は暗い。
擬似民主主的な資本主義を模した社会主義国家の表れだ。
戦後の激動を潜り抜け育った世代に育てられたわたし達は、豊かさに慣れられず、上手に甘えられないし、甘やかしもできない。

街を歩けば、金の卵たる子供達は口を半開きにして猫背でのろのろと足を引きずっている。
決して、歩いているとは言えない有様だ。
金の卵は、平成に入って以来、金メッキで中身が腐ってしまった。
其れもいいのかもしれない。全てに寿命があるとしたら、国家にも其れがあり、日本は過熟して腐り落ちる時期に来ているのかも知れない。

だとしたら、日本の未来は真っ暗から一転、真っ白になる。
更に漂白されて遠からずこの国は透明になるだろう。
国旗が象徴している。
白地に一点の赤丸、そんな単純極まる国旗は、とても美しく、頼りない。

アメリカとのチャットで、USAには神話が無い、と言う奴がいた。
ネイティブは信心深いのに、英国は神話で固まっているのに、移住民族である自分達には国産みの神話が無い、と。

確かにUSAは人間が建国した移住民族のための国だ。
アフリカから奴隷を連行して重労働を課し、ネイティブアメリカン達を射撃の的にして遊び、一欠けらの尊敬も無く、牛や馬や犬の方を尊重し、世界一の国力を築き上げた戦争好きの国だ。
USAには血が似合う。
中東の神に捧げる血ではなく、嗜好のための流血だ。

初めて北米大陸が動じた初テロで汚され怒り狂ったのも頷ける。USAの漂白された肌と髪を持つエリート達は、赤い肌をした野蛮な神を信じる民を許せなかったのだろう。
恐らく彼らが何もしなくても、米国は戦争を仕掛けたはずだ。
定期的に軍隊を起動しないと、USAは潰れてしまうのかも知れない。
ソ連崩壊以来連綿続いてきた戦争が戦争好きを裏付ける。

わたしがそういうと、向こうからこんな返事がきた。
「日本は重大な罪がある。世界初の原爆投下を米国に決意させ、其の威力を披露し、カミカゼと言う名の下に自爆という自他殺傷による攻撃手段を推奨した二重の債務がある。ドレスデンでなくヒロシマであったのは、単に肌や髪の色だけではない。戦争を美化した重罪のため、日本が放射能汚染地に選ばれたのだ。USAをして核兵器実行に至らしめたのは、日本人の戦美化意識を杞憂したためだ」と。

確かに日本人は農耕民族のはずなのに、いくさが好きだった。
戦を美化した逸話は現在も大河ドラマで繰り返しわたし達に刷り込まれている。

日本人は争いが好きなのだ。何にでもランキングを付けたがる。
秀劣を平等に扱うには、優先と優遇の相互措置を取らねばならない。
偏り与え続ければ、飴の美味も鞭の痛みも慣れてしまい、効き目が薄れる。

そして、勇気ある退却の英断が勝利の鍵となる、ということを昔の戦人は知っていた。
退却と逃亡は似て非なるものだ。傍らからは同じく見えても、其の屈辱に耐え力を蓄えるのが一時の退却。
恥辱からも逃げ出せば、ただの負け犬になる。

いつからか、わたし達日本人は礼節は勿論、恥をも忘れてしまった。
だから金メッキ達が街を闊歩ともいえないのろのろでうろついている。
わたしは日本に愛着が無いので、(倫敦生まれだし米国勤務だし)わたしの年金支給が尽きる前に、早くこの国が潰れればいいと思う。
税金も年金も保険も、役人が二重顎二段腹になるためだけのものだ。
庶民は痩せていくしかない。
なのに、このところ何処を見てもデブばっかりだ。
トップモデルでさえ、二の腕が弛んでいる。

mortification、苦行、禁欲、屈辱、壊疽、を意味する言葉だが、其れが何より日本に欠乏している要素だと、同意して、またワインを呷った。

わたしは禁欲と怠慢を極端に繰り返し、其れが齎すギャップの苦痛を糧に生きている。
空腹感やニコチン、アルコール欠乏感が好きだ。
やがて来る全てを満たす直前の緊張感が好きだ。
満たしてしまうと、欲望は単なる現実に変わり、何の感動も無くなる。

戦争もそうなのだろう。平和や幸福にはとどまれないのが人間の性なのだ。
わざわざ食べ物を腐らせて食う人間は、一体何処まで歪んで萎んで、罪を犯し続けるのか、老化し続けるのか、退化を極めるのか。

見極めたくもあり、見る前に死にたくもある。

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