鬱病を楽にしよう~弐
6、鬱病と脳
欝病では、扁桃体の興奮と関連してさまざまな悪影響が起きる。
先ず、前頭葉の働きが悪くなる。
PETという医療機器で脳の血流を見た結果、特に前頭葉、額の辺りと海馬で、血の巡りが悪いという。
血が来ないということは、其の部分の脳細胞に、酸素や栄養素が届かず、脳細胞が働けなくなるということだ。
前頭葉の働きは多岐に渡るが、ズバリ言えば脳全体のコントロールだ。
其れには扁桃体の興奮をコントロールするという、重要な機能も含まれる。
扁桃体が興奮し過ぎたとき、例えば取り越し苦労とか、取り返しの付かない過去の事件への罪悪感に対し、其れは考えすぎだよ、とストップをかけ、気分転換させるような機能だ。
前頭葉の血の巡りが悪いということは、気分転換が上手く出来なくなる、ということにも繋がり、何時までも憂鬱な気分から脱せないという欝病の症状の原因の一つではないかと考えられる。
7、海馬の萎縮
海馬が小さくなる、つまり萎縮することは、脳の中心近くにあり、長期的な記憶を蓄える機能を担っている部分が萎縮するので、物覚えや思考力が鈍るのだという説がある。
海馬は新陳代謝が活発な場所で、言い換えれば多くの血液を必要とする場所だ。
そして、コルチゾールは脳の血の巡りを悪くする働きがあるので、海馬にも血液が回らなくなり、海馬で新しい脳細胞が生まれにくくなる。
それどころか、既にある細胞さえ血液不足で死滅し始める。
こうして海馬を構成している脳細胞は減っていき、実際にサイズも小さくなるのだ。
MRIという医療機器での観察結果では、交通事故などの一過性の重いストレスの経験者では零~一〇%、戦争などの慢性的なストレス経験者では四十%~五十% も海馬が小さくなっていることが分かったそうだ。
8、血液中のコルチゾールの濃度
血液中のコルチゾールの濃度が慢性的に高い。
つまり脳も体も常に興奮状態になっており、休まる暇が無い。
この状態が長く続くので脳や内臓はすっかり疲弊してしまうと言われている。
一、セロトニンが少なくなる。
但し、セロトニンが足りなくなる理由は、単純に抑制されるからだけなく、複数が同時に成立することもありえる。
作る材料(アミノ酸)が足りない、
作る能力が低下している、
作られてはいるが正常に使われる前に横取り、再吸収されている、
作られたものが酵素によって捨てられて、つまり酸化させられている。
二、ノルアドレナリンが少なくなる。
この理由も単純に備蓄分を枯渇させてしまうだけなく、以下のものが考えられる。なお、複数が同時に成立することもありえる。
アミノ酸が足りない、
作る能力が低下している、
作られてはいるが正常に使われる前に横取り、再吸収されている、
作られたものが酵素によって酸化させられている。
三、副腎が肥大する。
これは扁桃体からの刺激によって常にコルチゾールを量産させられているため、いわば鍛えられた結果と言われている。
通常の人では副腎を(正確には間接的に、CRFという物質を与えて)刺激すると副腎からコルチゾールが出てきて血液中のコルチゾール濃度が上がるのだが、欝病患者は上がらない。
これは、副腎がすでに能力の限界までコルチゾールを作り続けているために、今さら新しい刺激を加えても副腎がこれ以上頑張れないからだと言われている。
9、パニクったときどうしよう?
パニクるときとは? 其れを治すために知るべきことは?
パニックはどうすれば治るのか?
本来は扁桃体の興奮さえ収まってくれれば、大部分は済む。
だが、その方法が現在見つかっていないのだ。
どういう時に扁桃体が興奮するかというと、先ず、今現在の状況が不快な時。次に過去の不快な状況を思い出した時、だ。
特に二つ目の方は、自分が意識しなくても、無意識の内に、過去の記憶が反芻されても、起きてしまう。
此れは自分の意思でどうにかできるものではない。
其れでも、健康な人であれば扁桃体が興奮し過ぎたら、前頭葉が抑えてくれる。
しかし、欝病の場合は慢性的な血行不良で前頭葉が弱っており、扁桃体を黙らせる力を失っているという悪循環が起きているので、最早止める手段がない。
一般的に言われている、欝病には休養が必要というのは、扁桃体を此れ以上興奮させるな、という意味だ。
10、扁桃体の興奮を抑止しよう
扁桃体の興奮が、欝を増進させる。其れを止めるには、とにかく休養が大事だ。
ではどうするか? 以下の三つが挙げられる。
扁桃体を興奮させるような記憶が薄れるまで、時間を稼ぐ、
扁桃体の抑止力を用意する、
扁桃体が起こしてしまった悪影響をカバーする。
具体的には、
扁桃体を興奮させるような記憶が薄れるまで、時間を稼ぐ、
ストレス源から離れて気を紛らわせるようなことをし、扁桃体をこれ以上興奮させない、
扁桃体の抑止力を用意する、
前頭葉の働きを回復させ、扁桃体を抑制させる、
扁桃体が起こしてしまった悪影響をカバーする、
コルチゾールを減らして、脳細胞が此れ以上死なないようにする、
脳細胞の材料となるアミノ酸を摂り、死滅した脳細胞の再生を助ける、
脳全体の血流を増やして、思考能力を取り戻す、
セロトニンとノルアドレナリンの材料となる、アミノ酸を充分に摂り、此れらが合成されるのを助け、精神状態を安定させる、
やらなければいけないことを減らし、ノルアドレナリンの消費を抑えて枯渇を防ぐ、
セロトニンを作っている臓器を光と運動によって刺激し、セロトニンをたくさん作らせて精神状態を安定させる、
自律神経の働きを正常にするために、生活サイクルを正す、だ。
聞きなれないかもしれないけれど、此れらは欝病のメカニズムに忠実に対応して、手を打った結果だ。
良い休養の効率を、追求していった結果、とも言える。
尚、今までの、抗欝剤を飲んで安静にする、という手段は否定しない。
あれはあれで意味がある。
しかし、其れだけでは、何時まで経っても治らないという人や、何時治るか分からないのを待ってはいられないという人は、満足できない。
だから、まずは医者にいって抗欝剤を貰い、出来れば安静にしていること。
どうしても仕事が休めない、ストレスから逃げられないという場合は、それはそれで仕方がない。
治る速度は少し遅くなるが、必ず何とかなるので安心して欲しい。
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