Thursday, February 16, 2006

*摂食障害の類友

ふらっと、昨日、入院仲間だったリカがマンションにやってきた。
家教えていないのに、流石だ。
アイツは何時だって他人のものを盗む。
住所も電話番号もメアドもブログも。

「話したくってさ」

理由は其れだけ。其れでリカを動かすには十分なのだ。多分殺人を犯しても、リカは「だってしたかったんだもん」と自供するだろう。
絶対弁護してやらねえ。
何時退院したかも聞かず、取り敢えず取って置きのローズヒップティーを出した。勿論無糖で。砂糖なんか入れたたら、もしくは出したら、もう過食モード、嘔吐スイッチON、わたしの部屋でやらないで欲しい。

わたしはこの部屋を購入してから、一度も此処で嘔吐していない。
一度でもやったら、タブーが無くなり、戻ってしまうと分かっているからだ。
だから他人にもゲロって欲しくない。ゲロで汚されたら自暴自棄になって、自分もやってしまうから。
玄関を開けるなり、わたし言った。ゲロすんなと。

リカは不思議そうにあちこち見て回っていた。

皆同じことをする。
不思議だが、来た人に言わせると、当然らしい。
なぜか?

わたしが購入したマンションの一区画には、日本語が存在しない。
学校の教材を除けば、すべて多各国語なのだ。
英語が一番多いのは当たり前だが、ドイツ、フランス、アラブ等等、大方の人が見慣れない文字が並んでいる。
ちゃんとログインしないと、PCの日本語は化ける。
楽天だって化け化けだ。
おまけにこの顔。何人だか分からない。

ま、わたしのことはいいとして、リカだ。
何でどうやって来たのか知らないが、小一時間ほど探検した後、「お腹減った」の連呼が始まり、わたしは仕方なくトマトリゾットにチキンフリカッセ、生サラダ、生絞りオレンジジュースを無料でサービスした。

「お姉、死にたくない?」
……唐突な奴だ。
「死にたいでしょ? ねえ、一緒にやらない? コレ持ってきたんだ、DVD。完全自殺マニュアルの一、二」
「其れ観た。詰まんないだろ」
「そっかあ、お姉のがグロいもんね」
「ああ、うちのがグロゲロ。あの程度で付く怖気は無い」
「お姉、自分の内臓見たんだよね」
「ありゃ事故だ」
「あたしもバイク乗りたい。乗ったら死に安いじゃん?」
「バイクが可愛そうだ、歩いて轢かれろ」
「ねえお姉さあ、あたしが死んだら、死体食べてくれる?」
「死体損壊罪いになる、お断り。お前の肉って、無いじゃん、鶏がら」
「嬉しい! あたし鶏がら? もっと言ってよ、もっと痩せたい」
「なら食うな」
「できたらこんなことしてないって」

リカは取り留めなく、自分の生い立ちを話し始めた。
自分が如何に不幸か、恵まれないか、可哀想かを、延々話した。
そして一々、同意を求める。
こういっては何だが、摂食障害者には、どうも過剰な被害者意識や不幸自慢が多い。
うっかり「あんたは幸せだよ」なんて言ったら、殆どの人が「そんなこと無い、わたしはこんなに不幸だ」と、更なる不幸自慢が始まる。

リカも同じだった。
可哀想といってもらって何が嬉しいのか分からない。
散々不幸自慢をして、六時間後、リカはふらっと出て行った。帰ったとはいえない。何処へ行ったのか知らない。
メシを食わせてやった礼もいわず、唯一言、
「お姉、あたしが死んだら泣いてね」
とだけ言って、次会う約束も、二度と会わない約束もせず、何処かへ消えた。
うちは駅から八分の立地だ、何処へでも行ける。
しかし、何が言いたかったのか?

何となく気になった。
自殺予告だったのか。
多分、否絶対そうだ。

予感的中。
ケータイにメールがあった。
「やっちゃった、迎えに来て」
何て面倒な奴。
加えて厄介だ。
何と奴は、駅のホームでリスカしていた、らしい。
わたしが行ったときは、駅員室で寝ていた。
寝顔はまだ小娘だ。
全く面倒で厄介で可愛い奴。

一晩泊めた。
始発で今度こそ何処かへ消えた。
学校も辞めたらしい。
どうにもやるせない。
救うなんておこがましいことは望まないが、何かできないのか、わたしは?
わたしが一番役立たずだ。
……って台詞もまた、不幸自慢なのだろう。

後味悪い。
感じ悪い。
気分悪い。

ごめんな、リカ。

0 Comments:

Post a Comment

<< Home